秘密の地図を描こう

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 レイが何かの映像を見ている。しかも、自分からは見られないような位置で、だ。
「……何を見ているんだ?」
 見られないからか。それとも、レイが集中しているからか。何を見ているのか興味が出てくる。
「レイ?」
 教えてくれないか、と思って声をかけても、彼は振り向こうともしない。
 聞こえていないのか?
 それとも、単に集中しているだけなのか。
 彼のことだから、後者の可能性が高い。しかし、前者の可能性もないわけではないのだ。
「何見ているんだ?」
 こうなれば、実力行使だ。そう判断をしてレイのそばまで移動する。そして、肩越しにモニターをのぞき込もうとした。
 その瞬間、レイは画面をオフにする。
 だが、一瞬だけでも彼が何を見ていたのか、わかってしまった。
「……フリーダム……」
 あの機体を自分が見間違えるはずがない。
 しかし、何故、レイが――映像とは言え――これを見ていたのだろうか。
「シン、離れろ」
 怒りを含んだ声でレイが言ってくる。
「何で、フリーダムを!」
 しかし、それすらもシンを止めることはできなかった。
「あんな、人殺し!」
 反射的にこう口走ってしまう。
「……俺たちも、戦争が始まれば、同じように人殺しになるんだぞ?」
 わかっているのか? とレイが反論をしてくる。
「そんなこと!」
「わかっている、か? それとも、自分はそんなことをしない、か?」
 シンの言葉を遮るように彼はこう問いかけてきた。
「軍人である以上、どのような命令を受けるかわからない。その中には民間人の命を奪うことも含まれているんだぞ?」
 見捨てる、と言う意味も含めて……と彼は続ける。
「第一、あれだけの戦力差だったんだ。一人の力だけではどうにもならないのではないか?」
 それをパイロットのせいだとするのは間違っていると思う。彼はそうも言う。
「知らないくせに」
 何も、とシンは言い返す。
「あれだけ強かったんだ! それなのに、どうしてみんなを守ってくれなかったんだよ」
「数の差だろう」
 シンの叫びに対して、レイは冷静な口調で言い返す。
「どれだけ優秀なパイロットでも、十倍以上の戦力差があればどうしようもない」
 違うのか? と彼は続けた。
「だって……あいつは、本当に強かったのに……何故、俺の家族だけ……」
 どうして、彼は自分の気持ちをわかってくれないのだろう。そう思いながら、言い返す。
「そう思っているのはお前だけじゃない。だが、その怒りをパイロットに向けるのは間違いだ」
 自分がその立場になった場合、それを受け入れられるのか。レイはそう問いかけてくる。
「何で、俺が……」
 自分は恨まれるようなことをしていない。だから、そんな質問は無意味ではないか。
「パイロットである以上、同じ状況に立たされないとは限らないだろう?」
 何よりも、とレイは続ける。
「俺がこの状況に放り込まれたら、誰も守れないと言い切れる」
 そうである以上、あのパイロットを非難できない。彼はそうも言う。
「そもそも、あれだけ混戦だったんだ。守りたくても守れなかった、と言う可能性だってある」
 怒りは地球軍に向けろ。そう言われても納得できない。
「……何で、お前はそんなにフリーダムを擁護するんだよ」
 シンは思わずそう問いかける。
「決まっている。俺の大切な人がフリーダムに助けられたからだ」
 きっぱりと言われて、シンは一瞬言葉に詰まった。
「だから、俺だけは最後まで擁護する」
 そう言う彼に、すぐに反論ができない。
「それでも、俺はあいつが許せないんだ……」
 こういうのが精一杯だった。

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最遊釈厄伝